<行列の線形独立性の判定 編>
今回の記事は、行列式の応用編②ということで行列式を用いて行列の線形独立性を判定する方法を紹介します。
初学者向けにわかりやすく、例題や練習問題もつけて解説しているのでぜひ最後までご覧ください。
また、行列式の基礎を知りたい方は以下の記事を読んでからこの記事を読みましょう。
<大学数学>これでバッチリ! 行列の基礎編① | さんそ ブログ (sannso-o2.com)
この記事を書いている人
・京都大学理系学部
・大学で線形代数学を学習中
線形独立性とは
まず、そもそも今回のテーマである線形独立性とは何かについて丁寧に説明します。
線形代数学において、ベクトルの線形独立性はとても重要な概念です。
与えられたベクトル集合が線形独立であるとは、これらのベクトルの任意の線形結合がゼロベクトルとなる場合、その結合係数がすべてゼロでなければならないという条件を満たすことです。
例えば、3つのベクトルがあるとします。
\[
\mathbf{v}_1 = \begin{pmatrix} v_{11} \\ v_{12} \\ v_{13} \end{pmatrix}, \quad \mathbf{v}_2 = \begin{pmatrix} v_{21} \\ v_{22} \\ v_{23} \end{pmatrix}, \quad \mathbf{v}_3 = \begin{pmatrix} v_{31} \\ v_{32} \\ v_{33} \end{pmatrix}
\]
これらが線形独立であるかを確認するためには、以下の条件を確認します。
\[
c_1 \mathbf{v}_1 + c_2 \mathbf{v}_2 + c_3 \mathbf{v}_3 = \mathbf{0}
\]
ここで、\( c_1, c_2, c_3 \) がすべてゼロである場合にのみ、この式が成り立つなら、ベクトル \(\mathbf{v}_1, \mathbf{v}_2, \mathbf{v}_3 \) は線形独立です。
そうでなければ、それらは線形従属です。
行列式と線形独立性
行列を用いると、線形独立性の判定を簡単に行うことができます。
行列を使ってベクトルの線形独立性を調べる方法としては、行列式を用いた方法があります。以下にそのステップを説明します。
1.行列式を計算する。
2.①行列式が0の場合、線形独立でない(線形従属)。
②行列式が0でない場合、線形独立である。
では、実際に問題を解いていきましょう。
例題
以下のベクトルが線形従属か線形独立か判定せよ。
(1)
\[
\mathbf{v}_1 = \begin{pmatrix} 1 \\ 2 \end{pmatrix}, \quad \mathbf{v}_2 = \begin{pmatrix} 3 \\ 4 \end{pmatrix}
\]
(2)
\[
\mathbf{v}_1 = \begin{pmatrix} 1 \\ 2 \\ 3 \end{pmatrix}, \quad \mathbf{v}_2 = \begin{pmatrix} 4 \\ 5 \\ 6 \end{pmatrix}, \quad \mathbf{v}_3 = \begin{pmatrix} 7 \\ 8 \\ 9 \end{pmatrix}
\]
例題解答
(1) 答え:線形独立
まず、これらのベクトルが線形独立かどうかを確認するために、行列を作成します。
\[
A = \begin{pmatrix} 1 & 3 \\ 2 & 4 \end{pmatrix}
\]
次に、行列式を計算します。
\[
\text{det}(A) = 1 \times 4 – 3 \times 2 = 4 – 6 = -2
\]
この結果、行列式が 0 ではないため、\(\mathbf{v}_1\) と \(\mathbf{v}_2\) は線形独立であることが確認できました。
(2) 答え:線形従属
まず、これらのベクトルを列ベクトルとして持つ行列 \( A \) を作成します。
\[
A = \begin{pmatrix} 1 & 4 & 7 \\ 2 & 5 & 8 \\ 3 & 6 & 9 \end{pmatrix}
\]
次に、この行列の行列式 \( \text{det}(A) \) を計算します。
行列式の計算は今回は丁寧にします。
次に、行列式を具体的に計算してみましょう。行列 \( A \) の行列式は次の式で与えられます。
\[
\text{det}(A) = 1 \times \text{det} \begin{pmatrix} 5 & 8 \\ 6 & 9 \end{pmatrix} – 4 \times \text{det} \begin{pmatrix} 2 & 8 \\ 3 & 9 \end{pmatrix} + 7 \times \text{det} \begin{pmatrix} 2 & 5 \\ 3 & 6 \end{pmatrix}
\]
そして、それぞれの小行列の行列式を計算します。
\[
\text{det} \begin{pmatrix} 5 & 8 \\ 6 & 9 \end{pmatrix} = (5 \times 9) – (6 \times 8) = 45 – 48 = -3
\]
\[
\text{det} \begin{pmatrix} 2 & 8 \\ 3 & 9 \end{pmatrix} = (2 \times 9) – (3 \times 8) = 18 – 24 = -6
\]
\[
\text{det} \begin{pmatrix} 2 & 5 \\ 3 & 6 \end{pmatrix} = (2 \times 6) – (3 \times 5) = 12 – 15 = -3
\]
したがって、行列 \( A \) の行列式は次のようになります:
\[
\text{det}(A) = 1 \times (-3) – 4 \times (-6) + 7 \times (-3) = -3 + 24 – 21 = 0
\]
この結果から、行列 \( A \) の行列式は 0 であるため、ベクトル \(\mathbf{v}_1, \mathbf{v}_2, \mathbf{v}_3\) は線形従属であることがわかります。
練習問題
以下のベクトルが線形従属か線形独立か判定せよ。
\[
\mathbf{v}_1 = \begin{pmatrix} 1 \\ 2 \\ 3 \end{pmatrix}, \quad \mathbf{v}_2 = \begin{pmatrix} 2 \\ 4 \\ 6 \end{pmatrix}, \quad \mathbf{v}_3 = \begin{pmatrix} 3 \\ 6 \\ 9 \end{pmatrix}
\]
練習問題解答
これらを行列にまとめると、
\[
A = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 2 & 4 & 6 \\ 3 & 6 & 9 \end{pmatrix}
\]
行列式を計算します。
\[
\text{det}(A) = 1 \times \text{det} \begin{pmatrix} 4 & 6 \\ 6 & 9 \end{pmatrix} – 2 \times \text{det} \begin{pmatrix} 2 & 6 \\ 3 & 9 \end{pmatrix} + 3 \times \text{det} \begin{pmatrix} 2 & 4 \\ 3 & 6 \end{pmatrix}
\]
それぞれの小行列式を計算すると
\[
\text{det} \begin{pmatrix} 4 & 6 \\ 6 & 9 \end{pmatrix} = 0, \quad \text{det} \begin{pmatrix} 2 & 6 \\ 3 & 9 \end{pmatrix} = 0, \quad \text{det} \begin{pmatrix} 2 & 4 \\ 3 & 6 \end{pmatrix} = 0
\]
したがって、
\[
\text{det}(A) = 0
\]
この結果、ベクトル \(\mathbf{v}_1, \mathbf{v}_2, \mathbf{v}_3\) は線形従属であることがわかります。
まとめ
このように、行列式を用いて線形独立の判定を簡単に行うことができました。
行列式を使ってベクトルの線形独立性を判定する方法は、特に次元が高い場合や多くのベクトルがある場合に非常に便利です。
これでバッチリ!!
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