<大学数学>これでバッチリ! 掃き出し法の基礎 編

大学数学
大学数学線形代数

行列の簡約や連立一次方程式の解法に用いられる基本的なアルゴリズムです。

このページでは、掃き出し法の基礎と具体的な例を通じて、行基本変形や階段行列、連立一次方程式の解法について詳しく説明していきます。

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・京都大学現役合格

・大学で数学、物理化学を学習中

掃き出し法の基礎

階段行列と簡約階段行列(簡約行列)とは

掃き出し法について説明する前に、階段行列と簡約階段行列(簡約行列とも呼ぶ)について説明します。

階段行列とは、「階段」という名のとおり、行列において0でない成分が左から右に階段を下りるように並んでいる行列のことです。

簡単にまとめると次のようになります。

階段行列

各行の0でない一番左の成分を「先頭の成分」と呼ぶと、下の行になるほど先頭の成分が右にずれていく行列のことです。

簡約階段行列(簡約行列)

階段行列における先頭の成分がすべて1であり、先頭の成分と同じ列のほかの成分が0である行列です。

掃き出し法のやり方

掃き出し法は、行列を操作して階段行列または簡約階段行列に変形するための手順です。

この方法は次の3つの行基本変形を使用します

1.行の交換

2.行のスカラー倍

3.行の加減

これらの操作を用いて、実際に行列の非ゼロ要素を左上から右下にかけて階段状に並べていきましょう!

例題

例題:次の行列を簡約化(簡約階段行列にすること)せよ。


$$
\begin{pmatrix}
1 & 3 & 1 \\
1 & 1 & -1 \\
3 & 11 & 5
\end{pmatrix}
$$

例題解答

ステップ1: 2行目から1行目の-1倍を引く

\[
\begin{pmatrix}
1 & 3 & 1 \\
0 & -2 & -2 \\
3 & 11 & 5
\end{pmatrix}
\]

ステップ2: 3行目から1行目の-3倍を引く

\[
\begin{pmatrix}
1 & 3 & 1 \\
0 & -2 & -2 \\
0 & 2 & 2
\end{pmatrix}
\]

ステップ3: 2行目を-2で割る(1/2倍する)

\[
\begin{pmatrix}
1 & 3 & 1 \\
0 & 1 & 1 \\
0 & 2 & 2
\end{pmatrix}
\]

ステップ4: 1行目から2行目の1倍を引く

\[
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 0 \\
0 & 1 & 1 \\
0 & 2 & 2
\end{pmatrix}
\]

ステップ5: 3行目から2行目の2倍を引く

\[
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 0 \\
0 & 1 & 1 \\
0 & 0 & 0
\end{pmatrix}
\]

ステップ6: 1行目から2行目の-2倍を引く

\[
\begin{pmatrix}
1 & 0 & -2 \\
0 & 1 & 1 \\
0 & 0 & 0
\end{pmatrix}
\]

これで簡約化できましたね。

練習問題

練習問題:次の行列を簡約化せよ。

$$
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
4 & 5 & 6 \\
7 & 8 & 9
\end{pmatrix}
$$

練習問題解答

\[
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
4 & 5 & 6 \\
7 & 8 & 9
\end{pmatrix}
\rightarrow
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
0 & -3 & -6 \\
0 & -6 & 12
\end{pmatrix}
\rightarrow\]
\[
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
0 & 1 & 2 \\
0 & 1 & 2
\end{pmatrix}
\rightarrow
\begin{pmatrix}
1 & 0 & -1\\
0 & 1 & 2 \\
0 & 0 & 0
\end{pmatrix}
\]

連立一次方程式と掃き出し法

連立一次方程式と掃き出し法の関係

中学校で扱った連立一次方程式を掃き出し法を用いて解くことができます。

まず、連立一次方程式を次のように表します。

\[
\begin{cases}
a_{11}x_1 + a_{12}x_2 + \cdots + a_{1n}x_n = b_1 \\
a_{21}x_1 + a_{22}x_2 + \cdots + a_{2n}x_n = b_2 \\
\vdots \\
a_{m1}x_1 + a_{m2}x_2 + \cdots + a_{mn}x_n = b_m
\end{cases}
\]

ここで、 \( a_{ij} \) は係数、 \( x_i \) は変数、 \( b_i \) は定数項です。

次に、連立一次方程式を行列形式で表現するために、係数行列 \( A \)、変数ベクトル \( \mathbf{x} \)、および定数ベクトル \( \mathbf{b} \) を次のように定義します.

\[
A = \begin{pmatrix}
a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} \\
a_{21} & a_{22} & \cdots & a_{2n} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
a_{m1} & a_{m2} & \cdots & a_{mn}
\end{pmatrix}, \quad
\mathbf{x} = \begin{pmatrix}
x_1 \\
x_2 \\
\vdots \\
x_n
\end{pmatrix}, \quad
\mathbf{b} = \begin{pmatrix}
b_1 \\
b_2 \\
\vdots \\
b_m
\end{pmatrix}
\]

すると、連立一次方程式は次のように行列形式で表現できる。

\[
A\mathbf{x} = \mathbf{b}
\]

拡大係数行列(または増強行列)は、係数行列 \( A \) に定数ベクトル \( \mathbf{b} \) を追加したもので、次のようになる。

\[
(A | \mathbf{b}) = \begin{pmatrix}
a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} & | & b_1 \\
a_{21} & a_{22} & \cdots & a_{2n} & | & b_2 \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots & | & \vdots \\
a_{m1} & a_{m2} & \cdots & a_{mn} & | & b_m
\end{pmatrix}
\]

拡大係数行列に行基本変形を施しても、対応する連立一次方程式の解は変わらないです。

したがって、拡大係数行列を掃き出し法で階段行列にすることで連立一次方程式を簡単にして解きましょう。

例題

では、実際に問題を解いてみましょう。

例題:次の連立方程式を掃き出し法を用いて解け

\begin{cases}
x -2y +2z = 1 \\
x -y + 3z = 4 \\
2x – 5y + 4z = -1
\end{cases}

例題解答

次のような拡大係数行列を考える。

\begin{pmatrix}
1 & -2 & 2 & | & 1 \\
1 & -1 & 3 & | & 4 \\
2 & -5 & 4 & | & -1
\end{pmatrix}

掃き出し法の手順で簡約化すると次のようになる。

\[
\begin{pmatrix}
1 & -2 & 2 & | & 1 \\
1 & -1 & 3 & | & 4 \\
2 & -5 & 4 & | & -1
\end{pmatrix}
\rightarrow
\begin{pmatrix}
1 & -2 & 2 & | & 1 \\
0 & 1 & 1& | & 3 \\
0 & -1 & 0 & | & -3
\end{pmatrix}
\rightarrow\]
\[
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 4 & | & 7 \\
0 & 1 & 1 & | & 3 \\
0 & 0 & 1 & | & 0
\end{pmatrix}
\rightarrow
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & | & 7 \\
0 & 1 & 0 & | & 3 \\
0 & 0 & 1 & | & 0
\end{pmatrix}
\]

よって、\( x = 7 \)、\( y = 3 \)、\( z = 0 \) となります。

練習問題

練習問題:次の連立方程式を掃き出し法を用いて解け

\begin{cases}
x +2y +z = -5 \\
-x +y -4z = 2 \\
2x +2y + 3z = -6
\end{cases}

練習問題の解答

次のような拡大係数行列を考える。

\begin{pmatrix}
1 & 2 & 1 & | & -5 \\
-1 & 1 & -4 & | & 2 \\
2 & 2 & 3 & | & -6
\end{pmatrix}

掃き出し法を用いて簡単に表すと次のようになる。

\[
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 1 & | & -5 \\
-1 & 1 & -4 & | & 2 \\
2 & 2 & 3 & | & -6
\end{pmatrix}
\rightarrow
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 1 & | & -5 \\
0 & 3 & -3& | & -3 \\
0 & -2 & 1 & | & 4
\end{pmatrix}
\rightarrow\]
\[
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 1 & | & -5 \\
0 & 1 & -1 & | & -1\\
0 & -2 & 1 & | & 4
\end{pmatrix}
\rightarrow
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 3 & | & -3 \\
0 & 1 & -1 & | & -1 \\
0 & 0 & -1 & | & 2
\end{pmatrix}
\rightarrow\]
\[
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 3 & | & -3 \\
0 & 1 & -1 & | & -1\\
0 & 0 & 1 & | & -2
\end{pmatrix}
\rightarrow
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & | & 3 \\
0 & 1 & 0 & | & -3 \\
0 & 0 & 1 & | & -2
\end{pmatrix}
\]

よって、\( x = 3 \)、\( y = -3 \)、\( z = -2 \) となります。

まとめ

今回できるようになったこと

・行基本変形による掃き出し法

・掃き出し法を用いて行列の簡約化

・掃き出し法を用いて連立一次方程式を解く

今回は掃き出し法の基礎を解説しました。

次は、掃き出し法の応用編を解説しますのでぜひご覧ください。

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