この記事では「行列とは何か」、「行列の和、スカラー倍、行列の積のやり方が知りたい」といった悩みを解決します。
実際に例題や練習問題をつくったので、それらも解いてください。
行列は、線形代数学を学ぶ際、必ず使う最も基本的な道具です。ぜひ、この記事を見てマスターしましょう!
行列とは
行列は、数値や記号を長方形の形に配列したもので、行(row)と列(column)から成り立っています。行列 \( A \) は次のように表される。
\[
A = \begin{pmatrix}
a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} \\
a_{21} & a_{22} & \cdots & a_{2n} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
a_{m1} & a_{m2} & \cdots & a_{mn}
\end{pmatrix}
\]
ここで、 \( m \) は行の数、 \( n \) は列の数、 \( a_{ij} \) は \( i \) 行 \( j \) 列にある要素で(\(i\),\(j\))成分といいます。
つまり、横の並びを行、縦の並びを列というのです。
行列のサイズは \( m \times n \) で表され、これは \( m \) 行と \( n \) 列を持つことを意味します。
行列にはいくつかの特別な形があります。
例えば、
「正方行列」・・・行と列が同じ数の行列
「対角行列」・・・対角成分以外がすべてゼロである行列
「零行列」・・・すべての成分が0である行列(\(O\)(大文字のオー)で表します。)
行列の和
行列の和は、同じサイズの行列同士でのみ定義されます。行列 \( A \) と \( B\) が同じサイズ \( m \times n\) であるとき、行列の和 \( A + B \) は次のように各要素の和を計算します。
\[
A + B = \begin{pmatrix}
a_{11} + b_{11} & a_{12} + b_{12} & \cdots & a_{1n} + b_{1n} \\
a_{21} + b_{21} & a_{22} + b_{22} & \cdots & a_{2n} + b_{2n} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
a_{m1} + b_{m1} & a_{m2} + b_{m2} & \cdots & a_{mn} + b_{mn}
\end{pmatrix}
\]
この操作は要素ごとの加算であり、結果の行列も同じサイズ \( m \times n \) になります。
では、簡単な問題を解いていきましょう。
例題
例題:以下の行列\(A\)と行列\(B\)の和を求めなさい。
\[
A=\begin{pmatrix}
1 & 2 \\ 3 & 4
\end{pmatrix}
B=\begin{pmatrix}
5 & 6 \\ 7 & 8
\end{pmatrix}
\]
例題解答
各成分の和で計算できるので
\[
A + B = \begin{pmatrix}
1+5 & 2+6 \\ 3+7 & 4+8
\end{pmatrix}
= \begin{pmatrix}
6 & 8 \\ 10 & 12
\end{pmatrix}
\]
練習問題
練習問題:以下の行列\(C\)と行列\(D\)の和を求めなさい。
\[
C = \begin{pmatrix}
0 & -1 & 2 \\ 3 & 4 & -5
\end{pmatrix}
D = \begin{pmatrix}
1 & 1 & 1 \\ -1 & -1 & -1
\end{pmatrix}
\]
練習問題解答
\[
C + D = \begin{pmatrix}
0+1 & -1+1 & 2+1 \\ 3-1 & 4-1 & -5-1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 3 \\ 2 & 3 & -6
\end{pmatrix}
\]
行列のスカラー倍
行列のスカラー倍は、行列の各要素に同じスカラー(実数や複素数)を掛ける操作です。行列 \( A \) をスカラー \( c \) でスカラー倍すると、行列 \( cA \) は次のように計算されます。
\[
cA = \begin{pmatrix}
c \cdot a_{11} & c \cdot a_{12} & \cdots & c \cdot a_{1n} \\
c \cdot a_{21} & c \cdot a_{22} & \cdots & c \cdot a_{2n} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
c \cdot a_{m1} & c \cdot a_{m2} & \cdots & c \cdot a_{mn}
\end{pmatrix}
\]
この操作も各要素に対して行われるため、結果の行列は元の行列と同じサイズになります。
例題
例題:以下の行列 \(M\)をスカラー\(3\)倍した行列\(3M\)を求めなさい。
\[
M = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4
\end{pmatrix}
\]
例題解答
行列のスカラー倍の場合、各成分をスカラー倍すればよいので
\[
3M = 3 \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 3 \cdot 1 & 3 \cdot 2 \\ 3 \cdot 3 & 3 \cdot 4 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 3 & 6 \\ 9 & 12
\end{pmatrix}
\]
練習問題
練習問題:以下の行列 \(N\)をスカラー\(-2\)倍した行列\(-2N\)を求めなさい。
\[
N = \begin{pmatrix} 0 & 1 & -1 \\ 2 & -3 & 4
\end{pmatrix}
\]
練習問題解答
\[
-2N = -2 \begin{pmatrix} 0 & 1 & -1 \\ 2 & -3 & 4 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -2 \cdot 0 & -2 \cdot 1 & -2 \cdot (-1) \\ -2 \cdot 2 & -2 \cdot (-3) & -2 \cdot 4 \end{pmatrix}
\]
\[
= \begin{pmatrix} 0 & -2 & 2 \\ -4 & 6 & -8 \end{pmatrix}
\]
行列の積
行列の積は、行列と行列の間で定義される操作であり、行列のサイズに関して特定の条件を満たす必要がある。
具体的には、行列 \( A \) が \( m \times n \) のサイズで、行列 \( B \) が \( n \times p \) のサイズであるときにのみ、積 \( AB \) が定義されうる。このとき、行列 \( AB \) は \( m \times p \) のサイズになります。
つまり、行列 \( A \)の列の数と行列 \( B \)の行の数が等しければ、行列のかけ算ができるわけです。
そして、行列の積の各要素 \( c_{ij} \) は次のように計算されます。
\[
c_{ij} = \sum_{k=1}^{n} a_{ik} b_{kj}
\]
よって、行列 \( A \) と \( B \) の積 \( AB \) は次のように表されます。
\[
AB = \begin{pmatrix}
c_{11} & c_{12} & \cdots & c_{1p} \\
c_{21} & c_{22} & \cdots & c_{2p} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
c_{m1} & c_{m2} & \cdots & c_{mp}
\end{pmatrix}
\]
ここで、各 \( c_{ij} \) は \( A \) の第 \( i \) 行の要素と \( B \) の第 \( j \) 列の要素の積の総和です。この操作は行列積と呼ばれ、結果の行列は \( m \times p \) のサイズになります。
では、問題を解いて慣れましょう。
例題
例題:以下の行列 \(G\) と行列 \(H\) の積 \(GH\) を求めなさい。
\[
G = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4 \end{pmatrix}
H = \begin{pmatrix} 2 & 0 \\ 1 & 2 \end{pmatrix}
\]
例題解答
行列の積の各要素 \( c_{ij} \) は次のように計算されることを思い出してください。
\[
c_{ij} = \sum_{k=1}^{n} a_{ik} b_{kj}
\]
すると、
\[
GH = \begin{pmatrix} 1 \cdot 2 + 2 \cdot 1 & 1 \cdot 0 + 2 \cdot 2 \\ 3 \cdot 2 + 4 \cdot 1 & 3 \cdot 0 + 4 \cdot 2 \end{pmatrix}
\]
\[
= \begin{pmatrix} 4 & 4 \\ 10 & 8 \end{pmatrix}
\]
練習問題
例題:以下の行列 \(I\) と行列 \(J\) の積 \(IJ\) を求めなさい。
\[
I = \begin{pmatrix} 1 & 0 & -1 \\ 2 & 1 & 3 \end{pmatrix}
J = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ -1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}
\]
練習問題解答
\[
IJ = \begin{pmatrix} 1 \cdot 1 + 0 \cdot (-1) + (-1) \cdot 0 & 1 \cdot 2 + 0 \cdot 0 + (-1) \cdot 1 \\ 2 \cdot 1 + 1 \cdot (-1) + 3 \cdot 0 & 2 \cdot 2 + 1 \cdot 0 + 3 \cdot 1 \end{pmatrix}
\]
\[
= \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 1 & 7 \end{pmatrix}
\]
まとめ
今回の記事では行列の和、スカラー倍、積について例題、練習問題を通して解説しました。これらは今後、線形代数を学ぶ上でとても基本的な操作であるのでいち早くマスターしてください。
行列の性質についての記事も書くのでそちらも是非見てください。
これでバッチリ!!
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